SOW 学校に行きづらい子とその親のための居場所
2026年 3月 31日親も子も集まれる地域交流の場に
2026年 3月 31日
「SOW」(そう)は、横浜市港北区と神奈川区を中心に、学校に行きづらい子のいる保護者たちで運営している団体(代表・小嶋恵美子)です。
「はなまといる」という不登校と学校に行きづらい子の親の集いで出会った6人の小学生のママが、親だけではなく子どもたちも集まれる場所をつくろうと、2021年3月に設立しました。
名称のSOWは、英語で「種をまく」という意味です。「子どもたちの成長を見守りながら生きていくための種をまける場所」でありたい、との思いがこめられています。
活動は、地下鉄ブルーライン岸根公園駅から徒歩3分程、広い庭のある平屋の一軒家「COCOしのはら」で行われています。この場所は、認定NPO法人びーのびーのが自主運営をしている地域福祉交流スペースです。月曜日から金曜日の9時30分~15時まではカフェとして利用されており、毎週火曜日の12時~17時までをSOWがスペースの一部を借りて使っています。
そのため、12時~15時までの3時間は、SOWの活動とカフェの営業時間が重なり、カフェを訪れるシニアや赤ちゃん連れのママ・パパなど、SOWを利用する子どもたちと自然に交流が生まれるそうです。「本当に地域の方々とごちゃまぜな感じでいつも過ごしています。赤ちゃんに会いに来る子どももいますよ」と代表の小嶋恵美子さんは説明します。
「ひとりじゃないんだ」と安心できる居場所
最初は立ち上げメンバーを中心に集っていたSOWの活動。SNSや口コミなどで次第に参加者が増えていき、現在は毎回15名ほどの子どもが参加しています。小学生と中学生の子どもが対象ですが、高校生や大学生が訪れることも。
「子どもたちはSOWで初めて出会いますが、同じ場所で時間を過ごし、一緒に遊ぶ中で、だんだん友だちになっていきます」(小嶋さん)
「週に1回行ける場所があるっていうのがすごく大きいと思っていて、あそこに行けば話ができるとか、あの子に会える、みたいな安心感はありますね」(副代表の牧野直美さん)
不登校の改善ではなく、ここで安心して過ごしてもらうことを大事にしているそうです。
「学校に行けなくなると、この先どうなるか不安になる家族が多いと思います。でも、なんとかなっている人が近くにいると、自分だけじゃないって思えて、心強いんじゃないかな」と小嶋さんは目を細めます。
「子どもとずっと2人でいるから、ここに来て久しぶりに大人と話した」というママもいました。
不登校の子どもは、平日昼間に気楽に行ける場所があまりないそうです。家から出ると視線が怖い、近所の人に見られたらどうしようと考えてしまい、安心して過ごせる場所がないという声を聞きます。児童館や地区センターや学童など子ども向けの施設にも行けなくなってしまう子どももいるそうです。
そんな子どもが、外に出たくなったときに、「ここがあるよ」という場所でありたいと小嶋さんは話します。「COCOしのはらが一軒家であることも子どもの気持ちを和らげてくれています。お家の延長で、まるでおばあちゃんの家のような雰囲気があるので安心するのだと思います」。副代表の長谷川さんは、活動を通して様々な子どもの成長をまじかに見ることができることもSOWの魅力だと話します。「小さいときから見ていた子が高校生になった姿を見たときは、大人になったなあって」。
遊ぶだけじゃなく情報共有も
SOWは、来て何をするのかという決まりや仕組みがない点が特徴のひとつです。「みんなで遊んでもいいし、一人で過ごしていてもいい」「工作をしてもいいし、体を動かしてもいい」。
アナログのボードゲームで遊んだり、机にレジンの材料を出しておいて工作してみたり。家庭用の綿あめメーカーを置いてみたり。色々なものがあって、「あ、やってみようかな」と子どもが自主的に思う仕掛けを部屋に散りばめ、自由に過ごしてもらっています。
小嶋さんは、「訪ねてくる子ども同士で、学校の情報を共有しているのが、面白い」と話します。子どもの年齢が幅広いため、中学校に入るとこんなことがある、高校はこんな感じ、といった具合に。
学校の話を親がすると「行かなきゃいけない」とプレッシャーに感じる子どももいますが、子ども同士で話していると、とても自然体なのだそうです。例えば、修学旅行などの学校行事について、子ども同士が話していたとします。それで登校するかどうかではなく、まずはこういった行事があることを互いが知ること、そしてその先に自分がどうしたいかの選択があることを知ることができます。こうした、自分自身で考える習慣をつける積み重ねが、「世の中に出ていくための力になる」と小嶋さんは前を見つめます。
広がっていく居場所の輪
(左)ハラペコ料理倶楽部(右)「ヤギ好き好き倶楽部」の活動
SOWでは、COCOしのはらだけではなく、他の場所でも、子どもたちの居場所の輪を広げています。
六角橋地域ケアプラザでは、月に1回「はらぺこ料理倶楽部」という料理を体験するイベントを実施しています。立派な調理室があるので、料理好きな子、食べるのが大好きな子が集まってきます。
また、子どもは来られなくても親だけでもつながってほしいという思いから、保護者の集い(親の会)を毎月1回、港北区の篠原地域ケアプラザで開いています。育児の悩みを話したり、先輩ママやパパから話を聞く会を運営したり、横浜市の不登校対策など、様々な制度についての勉強会等を行っています。「自分たちが悩んできたからこそ、こうした情報が必要なのだと実感している」そうです。
変わり種では、月に1回、「ヤギ好き好き倶楽部」と名付けた、ヤギと触れ合うイベントを開催しています。ヤギを飼育している人の家を訪問して、その方の庭でヤギと遊ぶことができます。庭で炭火焼きをするなど、楽しいうえに美味しいイベントです。このときだけを狙ってくる子どももいるそうです。不定期ですが農業体験やゲーム大会など、子どもたちに様々な体験の機会をつくっています。
地域の人々にもっと知ってもらいたい
2026年2月には、「はなまといる」と「SOW」が合同で立ち上げた団体「HANASOW」(はなそう)の活動で、「学校に行きづらい親子のためのつながりMAP」を制作しました。この団体の主な目的は、地域の不登校情報の発信です。代表はSOWの副代表を兼ねる牧野直美さんが務めています。
つながりMAPでは、神奈川区周辺の不登校の親子を支援する親の会や居場所・学習支援などを行う15の団体を紹介しました。子どもが学校に行けなくなったとき、戸惑い・悩む親に向けて、仲間が近くにいることを伝えて安心してもらいたいという思いからです。
神奈川区役所の正面玄関や、掲載されている団体、療育センター、スクールソーシャルワーカーなど、地域のつながりを通じて配布しています。
また、SOWではSNSでの情報発信に力を入れています。Instagramでは、活動報告を写真と共に掲載。フォロワーは1,000人に迫ります。SOWの活動から足が遠のいてしまった子もインスタをチェックしてくれているようで、突然ふらっとやって来た子もいました。インスタでSOWを知っていたけれど、「2年越しでやっと来ました」というママもいたそうです。
小嶋さんは、「小中学生の子どもがいる方以外にも、不登校の状況をもっと知ってもらいたい。学校に行くか、行かないかという2択ではなく、多様な育ち方があることを知って欲しい。もっと地域とつながって、子どもが地域と一緒に育っていくようにしたい」と話します。
そのためにも、SOWの活動をさらに発信し、講演会などの活動を積極的に行うことを考えています。そのためにも、自分にできることを1つひとつ丁寧に進めて「地域との関わりを増やしていくことが最初の一歩」だと小嶋さんは話します。学校に行きづらい子とその親のための居場所SOWは、子どもたちの未来に種をまく場所として、地域で力をあわせ、チャレンジを重ねていました。
プロフィール
SOW
港北区と神奈川区で、学校に行きづらい子どもとその親のための居場所を運営。「生きるための種をまく時間になってほしい」という思いを込めて、不登校の子と親が支え合いながら活動する場を提供。地域と連携した体験事業を積極的に行っている。
