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更新日:2026年7月22日
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モデル解析の説明(森林管理・シカ管理ワークショップ報告書)
山根正伸 自然環境保全センター専門研究員
午前中のグループ討議で指摘があった森林管理とシカ管理の関係について、モデルを使った分析をお示ししたい。最近、共通認識として、水源環境保全、生物多様性保全の上で、林床植生が豊かであることが大事であることがわかってきた。このことについてモデルを使って検討したので報告する。
鈴木先生からご報告があったように、シカと森林の間は相互作用系である。人工林を放置すると下草が減って土壌流出が起きる。間伐をすれば草が増え、木が生長すると草がなくなるので、また間伐をする。一方、シカは、個体数調整によって数が変動し、行動も変わるということがわかってきた。また、シカは森林管理で増えてきた草を食べることによって栄養状態が変化し、数が増えていくということもわかっている。
シカ保護管理計画によるシカ管理は個体数を変動させ、水源の森林づくりの森林整備は林床植生を変動させ、シカは林床植生を食べる。林床植生が変化して餌が増えれば、シカが増えるという相互作用系になっている。シカと林床植生と森林管理の関係は、シカ密度と林床植生の現存量のバランスの問題として考えることができる。シカがある程度生息していても、林床植生が十分であれば問題は解決する。丹沢大山の自然再生では、ブナ林域ではシカの生息数を大幅に減らすが、人工林域である程度シカ個体群を維持していくとしている。しかし、森林とシカは相互作用系なので、このバランスをとるのは難しい。
SDモデルを使って3つのサブモデルを作った。森林管理のモデルには、一定の整備をすれば草が増えるということを外部条件として与える。シカ個体数変動のモデルでは、生まれて死ぬ、捕獲される、生まれたシカは2年ぐらいで大人になる、という条件のもとでシカ密度が変動する。下層植生のモデルは、下草がシカに食べられて減り、森林管理で増えるという関係になる。これらのサブモデルをつないでモデルをつくった。
このモデルに、もとの植生状態、シカの頭数、性比や子供の比率、出産率などの条件をこれまでのモニタリング結果などをもとに初期条件として与えた。基本モデルは非常に単純な式なので、例えば、ほとんど獲らない状態にするとシカは幾何級数的に増え、雌をたくさん獲りすぎると、全然シカがいなくなるなど、計算結果は極端な挙動をする。
そこでモデルを改良し、獲りすぎによる絶滅を避けるため、雌の数が一定以上減ってしまったら、雌の捕獲を止めて雄の捕獲に切り替える、というような捕獲調整を組み込んだ。また、シカの数がたくさん増えて餌が減ると、大雪などで大量死するというクラッシュを組み込んだ。これらの調整によって計算結果は、もう少し現実的な動きをするようになる。さらに、いくつかのわかっていない条件については、仮のパラメータを与えた。このようにしてモデルを作成し、実際に丹沢で考えることができる管理の条件をいくつか与えた。
初期条件は、人工林率は35%、10平方キロメートルの範囲でシカが出入りしない、自然状態での死亡率は0.2とし、ヘクタール当たり200頭を超えると死亡率0.7のクラッシュが起きることとした。この他妊娠率、1日あたりの採食量、植生回復率を与え、さらに生息密度は平方キロメートル当たり5頭の場所と、平方キロメートル当たり30頭の場所があり、雄と雌と子供の比率は1対3対2、林床植生は1平方メートルあたりこれぐらい、といった条件を与えた。
森林管理は、本数率20%程度の弱度の間伐と、本数率50%程度の強度の間伐を行うこととした。弱度の間伐では5年で下草が平方メートル当たり200グラム増え、強度の間伐では平方メートル当たり500グラム増えることとした。シカ管理は、全く捕獲しないケースや、猟区のように雄を弱めに獲る、管理捕獲のように全体の5割を獲り、そのうち雌が8割といった条件を設定した。
これらの条件を組み合わせると24通りの組み合わせができる。例えば、シカが多く植生が少ないところで、間伐をあまり行わず、雄を主体に弱めに捕獲すると、シカは急激に増えてクラッシュしながら推移し、植物は少ない状態が続く。一方、強度の間伐と雌主体の強めの捕獲を行い、植生が少ない場合、最初は大きく減って捕獲制限がかかり、その後10頭前後で推移し、下草は一気に増えていく。
24通りの組み合わせのうち、ある程度計算結果が安定する12通りについて、下草の量が、シカが食べる量の100倍に達するのにどれぐらいかかるかを検証した。その結果、シカ密度が高い場合、森林管理を強度に行い、シカ管理も強めにすると植生は短期間で回復し、シカの数が少ない場合でも植生が乏しい条件でシカ管理をほとんどしないと植生回復には40年といった長期間がかかるという結果が得られた。
総合的に見ると、強度間伐と雌主体の強めのシカ管理を行うと、林床植生の多少、シカ密度の高低に関わらず植生は、短期に回復または維持されることを、モデルは示唆している。間伐を弱めにして、雌主体の強めのシカ管理を行った場合、林床植生が豊富だと、シカ密度が多少高くても関係なく比較的短期に林床植生が戻る。逆のケースでは、15年以上かかる。どのようなシカ管理と森林管理をすればよいかは、その場所のシカや植生の初期状態に応じて異なることをモデルは示している。
シカ管理と森林管理を適切に組み合わせることは、植生回復を短期化させる効果がある。特に、シカ密度が高く、植生劣化が進んだ場所では、強度の間伐を行い、雌を主体にシカを捕獲するという管理を一体的に実施することで、植生を短期に回復させることができる。モデルには、まだ検討すべき問題もあるが、森林管理とシカ管理を一体化することで、短期的な効果が期待出来るということを、このモデル解析の結果は示唆している。
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